碁経衆妙の失題②『初手が5つ!?』
皆さん、こんにちは。 関西棋院棋士の星川愛生です。
前回から古典詰碁『碁経衆妙』の失題を解説しています。
テーマの失題ですが定義として2種類あります。
1.解答が複数ある。
詰碁は基本的に答えは1つです。
なぜ答えが複数だと駄目なのかというと、1つの筋を学ぶための問題なのに複数解があると趣旨がぼやけることが考えられます。
2.答えがない。
例えば、黒先で生きる問題なのに黒に生きがない場合がこれに当たります。
出題されたのに答えがないのはとんちが利いてはいますが、やはり良くないかと思います。
この2点に当てはまるのが失題となります。
個人的には解く方からすると失題でも勉強にはなるかと思います。
しかし出題者側からは未完成の問題を出したことになるので良くないでしょうね💧
今回の詰碁は1の「解答が複数ある」パターンになります。
白先黒死の問題ですが碁経衆妙の失題の中でもワースト1となります。
※個人の感想です。
理由として殺す筋が2種類あるのと初手が5通りあるのがあげられます

まずは原本の正解図となります。白1のオキが手筋で実戦でも応用が利き覚えておくべき手ですね。
白5まで黒死になります。
白1のツケは意外な手ですが黒2に白3、黒4に白5のハネでこの図でも黒死です。
最初のオキ筋、この図のツケ筋で2種類殺す筋があることになります。
さてタイトルの5通りの初手ですがA、Bがオキ筋系の解答で
Cがツケ筋系の別解です。
最初の2通りの殺し方プラス、A~Cの3つで計5つとなります。
もし実戦なら、外の影響も考えてAが最善かも知れません

ここからは私の推測ですが、作者の林元美も
今回の詰碁は流石に問題があると思ったのではないでしょうか?
この図は、碁経衆妙の20年後に出版された『碁経精妙』に収録されています。
白先の問題で白1のオキで黒死となります。
今回の詰碁によく似ていませんか?
私はこの詰碁が修正案ではないかと思っています。
碁経精妙では碁経衆妙の詰碁が数多く再録されていますが
この図だけ新録されているのでそう推察した次第です

次回は2021年10月25日(月)に更新予定です。
内容は引き続き碁経衆妙の失題を取り扱います。
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