AIはブロック数で着手が変わる?~三妙手その三~

皆さん、こんにちは。 関西棋院棋士の星川愛生です。

引き続きkatagoのブロック数で着手に違いがあるかを検証します。
今回は最後の妙手を分析します。


スクリーンショット 2022-03-04 224320.png
白1が三妙手最後の一着です。
白からAまたはBの切断を見合いにしています。
愚形ゆえに気づきにくいのも、妙手たる由縁です。

では15bの分析結果から
15b_2500&25000③.png
さて、今回の15b2500手ケイマ
25000手は先手で何ヶ所か決めた後に、同じ場所にケイマとなりました。
左辺の黒全体をふんわり攻めようという意図です。

次に40bの分析結果です。
40b_2500&25000③.png
40bも興味深い展開となりました
15b25000手ではあっさり先手になった白1を手抜きして
黒は左上隅に手をつけに行っています。
受けるのは利かされという判断なのでしょうか?

最後に60bの分析結果です。
60b_2500&25000③.png
60bも面白いですね。2500手は1周まわって、15bと同じケイマ
25000手オシという新しい手が出現しました。
意味としてはケイマと同じですね。

では今回もまとめに入りましょう❗
スクリーンショット 2022-03-05 000908.png
今回のまとめ
1.15b、60bの2500手では白1のケイマを推奨。
2.40bでは白Bに手抜きして、黒CやDで隅に手をつけに行く展開。
3.60bの25000手のみ白Eの手を示した。
 意味としては白1のケイマと同じと思われる。
4.実戦の白Aは+0.2~-1.0目と評価。

さて、いかがでしたか?
今回はブロック数はもちろんのこと
探索手数でも、かなり違いが見られました。
15bは2500手がシンプルなケイマ、25000手が利かした後にケイマ
40bは2500手、25000手ともに利かしに反発
60bでは2500手が15bと同じケイマで25000手は似た意味のオシとなりました。

面白かったのは15b2500手実戦の手を0.2目得と判断したことですね。
要するにAIの分析した手より、実戦の方が良いと判断したということです。
これは三妙手の中でも初めてでした❗


次回は2022年3月14日(月)に更新予定です。
番外編として、15bの250手60bの250000手⁉
という両極端な分析の結果をお届けします


この記事へのコメント

SouthernAlps
2022年03月12日 08:31
いつも興味深く拝読しています。
先生の記事と直接関係ないのですが、
昨晩、棋聖戦第6局の配信動画を見て、
終盤の大石の生死に絡む
日本棋院表示のAIの評価値が途中
明らかにおかしくなって、
河野九段、鶴山八段も話題にしていました。
Katagoを採用しているのだと思いますが、
バージョンが古く、端末のスペックも
貧弱なのだと推測します。
当方所有の大したことない分析環境でも、
日本棋院表示のものよりはだいぶマシでした。
・どこから探索を始めるのか?
・それくらいの速さで探索できるのか?
・どこまで探索するのか?
で結論がずいぶんと変わる良い事例だな、
と思ったのですが、
先生はこの碁をご覧になられましたか?
まなぶ三段
2022年03月12日 17:14
SouthernAlpsさん、コメントありがとうございます。

>先生はこの碁をご覧になられましたか?
棋聖戦第6局、めっちゃ複雑な碁でしたね(汗)

改めて私のPCで分析したら(60bの25000手)、
それまで白が優勢のところ、190手目がマイナス22目で一瞬で
10目ほど黒良しになりました。しかし192手目は単なるコウ立てなのにプラス17目、193手目も何故かマイナスでいつの間にか白が優勢になっていますね。

>バージョンが古く、端末のスペックも 貧弱なのだと推測します。
私のPCでもグラフが一瞬上下したので、やはりAIが苦手な深い読みが必要な局面だったかも知れません。
特に日本棋院さんの様なライブ中継だと一手ずつじっくりと分析はできないので特に上下する気がします。
SouthernAlps
2022年03月12日 21:46
先生の分析環境での結果、ありがとうございます。

>190手目がマイナス22目で一瞬で10目ほど黒良しになりました。
>しかし192手目は単なるコウ立てなのにプラス17目、
>193手目も何故かマイナスでいつの間にか白が優勢になっていますね。

そうなのですか。恐らくですが、
25000手では探索数が不足している事例ではないでしょうか。
当方の分析環境で、この手の前後の探索数を増やしてみましたが、
局面が黒に好転したことは一度も無かった、
という結論になりました。

このコウになったあたりは、
人間(プロの先生方)がAIを上回っているようですね。
私自身の棋力では難解過ぎて、
真偽はよくわからないのですが…
まなぶ三段
2022年03月13日 00:04
>25000手では探索数が不足している事例ではないでしょうか。

SouthernAlpsさんの、このコメントが気になり今度は190手目の探索数を30万にしてみたところ、確かに実戦の190手目がプラス4目ほどになりました。

分析中、優勢がしょっちゅう入れ代わり中々安定しませんでした。
LeelaZeroのシチョウが苦手などの事例がある通り、
一直線だが長手数になる変化はAIは苦手なのだと思います。

私はたまにkatagoに領域を限定して詰碁を解かせますが正解図にたどり着かないことが良くあります。
この分野に関してはまだ人類に分がありそうです。

プロフィール

名前
星川愛生
誕生日:
6月19日
性別:
職業:
囲碁棋士
一言:
古典詰碁と囲碁AIに力を入れてます。

自作パソコンが趣味で機械系には割と強いかも?

最近はVTuberにハマっています(笑)

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