AIを使ったカンニングの対策②
皆さん、こんにちは。 関西棋院棋士の星川愛生です。
前回はAIカンニングの対策で電子機器に関しての記事でした。
今回は電子機器以外の対策を考えたいと思います。
前回同様、根本的な方法を提示して、その後に具体案と問題点を述べます。
また今後の展望についても考えます。
・カンニングが発覚したら厳罰に処する
カンニングが発覚した場合に厳しい処罰を受けるなら
思いとどまる可能性がある。
①対局停止期間を3年間あるいは5年間にする
以前、紹介したカンニングの事案では対局停止が1年間でした。
これは短いでしょう。
1年程度の罰で許されるなら、やってみようとなるかも知れません。
個人的には最低3年間、厳しくして5年くらいかなと思います。
問題点
厳罰化には特に問題がないかと思われる。
しかし、発覚と言っても色々な状況があるので
冤罪を産まないために、細心の注意が必要。
今後の展望
現状は棋院や運営側がその都度に話し合って決めており、手探り状態。
だが、事例が増えてくると処罰が明確化して抑止になるかも。
②警察や裁判所に訴える
韓国の入段試験でのカンニングは業務妨害で韓国棋院が訴えました。
裁判沙汰になる可能性があるのにする人は少数でしょう。
また捜査機関なら冤罪の可能性が低い。
問題点
警察沙汰、裁判沙汰となると訴える側も印象は良くない。
裁判費用や月日もかかる。
また、入段前の参加者や大会選手ならいざ知らず
棋士は棋院の人間でもあるので人間関係含めゴタゴタしそう。
・カンニングの痕跡を探す
AIカンニングした以上、人とは違う結果が残るはず。
その痕跡さえ見つかれば発見可能。
①AIとの一致率
これは囲碁だけでなく、将棋など他でも用いられる手法です。
AIとの一致率が高いと状況証拠ながら、クロに近いと言えます。
対局後でも棋譜さえあれば、発見可能なのも利点。
問題点
記録係がつく対局以外は当事者しか棋譜が残せない。
また現状、一致率からカンニングを判断する確固たる基準がない。
例えば、わざと3番目や4番目の候補手を選んでも判別可能なのか?
あるいはマイナーなAIを使う可能性もある。
今後の展望
現在、日本棋院さんが導入を進めているカメラ撮影からの
自動採譜システムが完成すれば棋譜の問題は解決する。
またアンティ トルマネン初段がAI利用検出の論文を出している。
このような論文を元に基準が策定される可能性はある。
②レーティングや直近の成績で判断
チェスの場合は公式のレーティングが存在する。※チェスのレートについて
カンニングで勝ちを得て、レートや勝率が不自然に上昇すると疑わしい。
ネット碁で不自然な段級位の上昇に運営側が選手を追求した事例がある。
問題点
あくまで疑惑でしかない。
若手の場合、レートや勝率が上がるのは当たり前なので区別が難しい。
また、日本では公式なレーティングは存在しない。
さて計2回にわたって、色々なAIカンニング対策を考えてみました。
AI自体、最近発展したものなので対策もまだまだこれからだと思います。
各棋院や運営は試行錯誤中なので皆さんも長い目で見ていただけると助かります。
次回は2022年4月18日(月)に更新予定です。
4月6日に碁聖戦の院内予選を打ちました。
お昼休憩なしの新ルールでの対局です。
今までの休憩時間の様子を語りつつ、自戦解説をします。
この記事へのコメント