レア棋書ご紹介『棋譜玄覧』垂棘屈産失国之形
皆さん、こんにちは。 関西棋院棋士の星川愛生です。
棋譜玄覧の紹介も今回で5回目になりますね
この棋譜玄覧、ご紹介したい詰碁がまだまだ沢山ありますが
ここで一旦区切りとさせていただきます。
そして、区切りにふさわしい問題を今回ご紹介します🎵
「垂棘屈産失国之形」という題名がついています。
「すいきょくくっさんしっこくのかた」と読みます。
黒番の問題ですが
なんと黒石が83個も取られるのに白が死んでしまう
という、とんでもない詰碁です
究極の捨て石といったところでしょうか?
4(1の右)
1図、まずは左下隅から始まります。黒は1と取る一手。
白2で黒の大石がアタリですが、手抜きして3に回ります。
当然、白は4と取りますが…
13(11)
2図、黒5と抜かれた後に切る手があります。
これも一種の石の下と言えるでしょう。
白6と今度は下辺から16と黒七子を取りつつ、中央にせり上がります
3図、抜き後に黒17、19で眼がありません💦なんとも不思議な形です。
白20から右辺に進み、まだまだ続きます。
4図、右下隅の黒109が最終手です。盤中の白が死んでいます
白は黒石を計83個も取ったのにびっくりですね❗
に詳しい手順のリンクを貼っておきます。
「垂棘屈産失国之形」
ところで題名の意味ですが、れんだいこさんのサイトに載っていました。
ページの下の方に垂棘屈産失国之形の問題図と題名の解説があります。
要約すると『中国の春秋時代、晋(しん)が郭(かく)を討つ時のこと。
隣国の虞(ぐ)を通るために晋王は国宝の垂棘の璧と屈産の馬を虞王に贈った。
気を良くした虞王は晋軍が通ることを許してしまう。
おかげで晋は郭軍を破ることができた。しかし郭を滅ぼした後、
晋は虞も滅ぼして結局、国宝を取り返してしまった。』というお話です。
ちなみに垂棘の璧とは宝石のことです。
さしずめ、黒83個の捨て石は垂棘の璧と屈産の馬で、
その代わりに白という虞国を失ってしまったという意味でしょうか。
この問題は「香餌懸魚勢」という詰碁が元になったとのこと。
しかし、それでもこれだけのものを作るとは驚嘆です❗
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